20.8.17

冬を待つもの




冷たい風を通すまいと
ぎゅっと縮こまっていた防寒着

フックに吊るされ
温かな空気を含み
しとりと濡れていた
肩や袖口が乾く頃には
ご機嫌に見えた

芽吹きの季節になると
フックは主人を失い
所在なさげで

時々ママンが
ひょいと掛けてたエプロンが
一塵の風にはためく事はあったけど
あとはただ
静かに  静かに
白い世界の訪れを待っていた

パパが翌朝出かけるまでに
その防寒着を
心地のよいものに
整えておく
それがまるで使命だとでも
思っているように



E


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